公開4日目の夕方。客席300人越えのシアター6には20名前後という驚くべき客入りだ。
映画の話
両親を殺された過去を持つ青年ブルースは復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せる「バットマン」となった。ブルースがバットマンとして悪と対峙するようになって2年目になったある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。史上最狂の知能犯リドラーが犯人として名乗りを上げる。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発する。やがて権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。
映画の感想
アメコミヒーロー物の爽快感やカタルシスは皆無で、まだ若きブルー
ス・ウェインことバットマンのアーリー時代を描いた作品だ。
私にとって「バットマン」と言えば私が子供の頃にアダム・ウェスト主演のテレビドラマ版を見て、その後ティム・バートン監督を迎えてワーナー映画が製作してきた作品を筆頭に、ずっと作品を追いかけてきた個人的に思い入れの強いアメコミヒーローだ。
今回の敵はリドラーだ、かつて私の子供の頃はナゾラーと和訳されていた。今回のリドラーは過去のリドラー違う軍服か作業着姿にマスク姿の凶悪犯であり、なんとなく「ソウ」シリーズの犯罪者ジグソーをも思い起こすような知能犯だ。
その為に作品全体がアメコミヒーロー+犯罪推理もの様な印象を受けた。
リドラー役はポール・ダノだ。あの童顔を逆手に取った上手いキャスティングだ。
本作には他にも後に大悪党となるペンギンも登場するが、まだペンギンもアーリー時代で小悪党のような存在でバットマンの敵とはいいがたい存在だ。演じているのはエンドロールで判明するのだが、なんとコリン・ファレルだという。映画を見ている間は全然判らなかった。
他にもバットマンと友好的な関係で登場するのがキャットウーマンだ。
彼女もまだアーリー時代で黒皮の全身タイトスーツに雑なマスクだけという姿で、頭だけ見ると女ねずみ小僧みたいないで立ちだ。
他に警察内で唯一のバットマン理解者のゴードン警部はダニエル・クレイグ版「007」でCIA諜報員フェリックス・レイター役で知られるジェフリー・ライトが演じていたり、ウェインの秘書アルフレッド役はなんとアンディ・サーキスが演じている。サーキスと言えば「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムや、「猿の惑星」のシーザーなどモーションキャプチャー俳優という印象であったが、今ではすっかり俳優として素顔で登場するくらいになった名わき役だ。
監督は「クローバーフィールド/HAKAISHA」のマット・リーヴスだ。
彼も「猿の惑星」シリーズを経て着々と大物監督へ上り詰めて「ザ・バットマン」へまでたどり着いた。
最後にブルース・ウェイン役のロバート・バティンソンについて書くと、個人的にはバティンソンがヴァンパイアを演じた「トワイライト」シリーズが大嫌いで、当初ブルース・ウェイン役にバティンソンがキャスティングされたと聞き失望したが、私の考えは間違ってた。本作のバティンソンはすごくいい。子供時代に両親を暴漢(のちのジョーカー)に襲われ失い、心に深い傷を負った青年役を魅力的に演じた。
私は勝手に彼に対して「線の細い俳優」というイメージを抱いていたが、本作を見ると意外とマッチョな体つきでダークヒーローを体現して魅せた。
現在アメコミヒーロー映画はマーベルとDCコミックスが競い合う様に次々と新作を送り込んでくるが、マーベルの勢いにDCが押されっぱなしに見えてきたが、本作「ザ・バットマン」を見ると老舗DCが変化球でマーベルとは違う切り口で攻めてきた印象だ。
本作の客入りを見ると興行的に厳しい印象を受けたが、大人のアメコミヒーロー物として本作は大いに評価したい。
ひとつ難点を上げるとバットモービルの造形が良くわからなかった。
この辺の乗り物やガジェットにテコ入れすれば「バットマン」はもっと面白くなると思う。